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[03.詩歌]句稿・試行 2016年1月

独吟・半歌仙(18句)

1.
梅一輪一りんほどのあたたかさ 嵐雪
2.
自転車の背を押す朝の東風
3.
精一杯無造作に包むバレンタイン
4.
かくしきれない尻尾の動き
5.
寒月を避けて黒猫 角を曲がる
6.
白い息消え 密約残る
7.
煙草吸う顔で抜け出す宴会場
8.
さめない恋と思い知らされ
9.
食べかけの氷イチゴは水となり
10.
おしゃべりやまぬ学校帰り
11.
鉄橋のほとりの花野さざめきて
12.
みみず鳴くなり道を失ひ
13.
十五夜のアリバイ完璧崩し得ず
14.
名探偵に仕事の依頼
15.
食卓に固ゆで卵転がして
16.
春のサラダの顔見世興行
17.
花の塵 文鳥に摘む はこべ草
18.
万物くすぐり光る風ゆく

【解説】
1.「発句は格調高い句を」と、ものの本にあったのだけど、そんなのが自分で作れるとは思えなかったので、嵐雪の超有名句を借りてくる。
2.春。一輪+一輪で二輪車
3.春。こんなに早く恋っぽいものを持ってきちゃいけないのだろうけど。
4.雑。尻尾があったら駄々漏れでしょう。
5.冬。月の定座。猫がするんと、尻尾で壁をなでる動き。あれ、どういう心の動き?
6.冬。角を曲がった先では、怪しい男が密談中。黒猫と黒い男と白い息。
7.雑。白いのは煙草の煙。煙草部屋での約束。
8.恋。宴は披露宴。居たたまれない。
9.夏。頭が痛くて食べきれないまま溶けていく。
10.雑。食べるよりおしゃべりに忙しい高校生たち。
11.秋。その彼らが乗る電車が鉄橋を渡る。
12.秋。秋の野でひとり迷って、呆然。鳴くはずのないみみずの声が聞こえます。
13.秋。月の定座。月夜の殺人事件、容疑者全員にアリバイがあり、捜査は迷走。
14.雑。思い余って、名探偵に丸投げ。
15.雑。名探偵といえばエルキュール・ポワロ。卵のような頭の彼が、朝食のゆで卵を食べているところに依頼の電話がかかって来る。
16.春。ゆで卵を散らした春のサラダは、彩り華やかに。今年初めてのこのサラダ。次は、花形役者でも花見でも、お好きな方向にどうぞ。
17.春。花の定座。鳥用サラダでした。
18.春。地面とか籠の鳥とかの狭いところから、広く明るいところへ。

以上、2016年1月

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