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[02.訪問記録] 20051207 アクメッド王子の冒険

無理やり定時にあがって、恵比寿の写真美術館でロッテ・ライニガーの映画を観てきた。
http://www.reiniger-world.com/
 
「パパゲーノ」、「ガラテア」、「アクメッド王子の冒険」の3本立て。
長編の「アクメッド王子の冒険」に短編2本を合わせるという形で、
先月から上映していた。
「パパゲーノ」は必須として、「ガラテア」か「カルメン」かで悩んだが、
映像の印象だと「ガラテア」のような気がしたので、こちらにしてみた。
 
どれも戦前の無声映画で、短編の「パパゲーノ」と「ガラテア」は字幕もない。
「パパゲーノ」は「魔笛」を知っているので、ほぼ完全に筋がわかる。
冒頭、鳥を手足のごとく使うパパゲーノの日常生活の場面からして、隅々まで神経が行き届き、素晴らしく美しい。
クライマックスの、卵から生まれる小さなパパゲーノとパパゲーナを見て、
そうか、この方が正しいなと思う。
鳥の一種と考えたほうが彼らの場合、納得できる。
 
と、いうことで最初の「パパゲーノ」からとても満足したが、
「ガラテア」に続いて上映された「アクメッド王子の冒険」に絶句した。
迫力が数段違う。
どのコマをとってもそのまま絵本にできるくらい、異常なまでに完成度が高い。
 
千一夜物語を題材にした冒険活劇で、
アフリカの魔術師が生み出した空飛ぶ馬を発端に、魔術師、カリフの息子のアクメッド王子、その妹ディナルザデー王女、ワクワク島のパリ・バヌー女王、アラジン、火の山の魔女らの登場人物が西はアフリカ、東は中国まで縦横無尽に飛び回る。
飛び回ると言うのは比喩でもなんでもなく、登場人物たちは実によく空を飛ぶ。
魔術師たちは自力で飛ぶし、空を飛ぶ鳥や魔物には事欠かない。
パリ・バヌー女王には鳥の衣、アラジンには空飛ぶ宮殿。そしてアクメッド王子の冒険は、空を飛ぶ馬に乗った時にはじまる。
 
これぞ御伽噺。
展開の予想はつくのに、迎えた展開はいつでもどこか予想外だ。
 
登場人物はみな、少し大きめの手をしている。
その手がとても雄弁だ。
手だけでなく、髪の先からつま先まで、全身がものを語る。
 
久しぶりに眼福と思えるものを見た。

Date : 2007/12/19(Wed) PM 03:53

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