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[02.訪問記録] 20060114[1] 新宿歴史博物館

企画展「暦の世界へ」を見る。
この日から始まった展覧会だが予想通りに人がいない。客より職員の方が多いかもしれない。
 
結論から言うと、今年のベスト展覧会を選ぶ時、6位から10位のどこかに入りそうな展覧会。
あくまで個人的には、だけど。
 
展示資料はほとんどが暦とその関連文献なので、普通に資料を展示しただけだとすぐに飽きるのだが、パネル解説が充実していて見ごたえがある。
江戸時代の地方ごとの暦の分布図や南部絵暦の解説、大小暦の絵解きは特に面白かった。
 
展示室入り口で配布していた冊子の巻末には、明治5年までの約200年分の大小対照表がついていて、反射的に喜ぶ。
が、喜んだ後で「あれ?」と思う。
冷静に考えると日本人の99.7%には必要のなさそうな情報だ。
注)
大小対照表:
各年の和暦、干支、西暦、大の月、小の月を一覧表にまとめたもの。
大の月、小の月、閏月の構成は毎年違うため、これがあると大小暦を読み解く時に重宝する。
 
この冊子といい、展示といい、なんだかこの企画展、ただの学芸員とは思えないマニアックな人物の存在を感じる。
配布冊子と展示の内容は微妙にずれているし、パネルの内容にしても少々熱が入りすぎているように見える。
そもそも、大小対照表にしたところで、展示にはそんなものは影も形もなかったのだ。
やはりこれは後援の「暦の会」が暗躍しているんだろうか。
 
さて、この会場で、金色夜叉の斬新な読み方を教わった。
あの有名な熱海の砂浜のシーンで、貫一が「毎年1月17日の月は僕の涙で必ず曇らせてみせる」という台詞、あれは尾崎紅葉が明治30年代に至っても旧暦の感覚で生きていたことを示しているのだそうだ。
旧暦だと1月17日の月は毎年ほぼ同じ動き方をするが、新暦だと毎年違うから。
また、ずいぶん細かいところに突っ込む人がいたものだ。
 
ちなみに、今年の1月17日の伊豆半島の天気は曇り。
これも貫一の執念か。

Date : 2007/08/30(Thu) PM 01:49

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